これまでの睡眠薬は、ベンゾジアゼピン系(ゾルピデム、トリアゾラム、エスタゾラムなど)や非ベンゾジアゼピン系(ゾピクロン、エスゾピクロンなど)が中心でした。しかし、これらには依存性や耐性、日中の眠気、記憶障害といった副作用が一定程度あり、高齢者や生活リズムの乱れがある方には注意が必要でした。
近年登場した「オレキシン受容体拮抗薬(例:スボレキサント、レンボレキサント、ラメルテオン)」は、従来薬とは作用機序が大きく異なります。オレキシンは脳の覚醒を促す神経伝達物質ですが、この受容体を選択的にブロックすることで、自然な眠気を促すことが可能です。結果として、以下のような利点が期待できます。
主な新しい睡眠薬の一覧
分類 | 薬剤名 | 主な作用時間 | 特徴 |
---|---|---|---|
オレキシン受容体拮抗薬 | スボレキサント(Belsomra®) | 約6〜8時間 | 入眠・中途覚醒両方に対応、依存リスク低、日中眠気少 |
オレキシン受容体拮抗薬 | レンボレキサント(Dayvigo®) | 約7時間 | 高齢者でも安全に使用可能、自然な入眠促進 |
メラトニン受容体作動薬 | ラメルテオン(Rozerem®) | 約2〜3時間 | 入眠障害に特化、依存性ほぼなし、認知機能影響少 |
非ベンゾジアゼピン系 | エスゾピクロン(Lunesta®) | 約6〜8時間 | 入眠・維持障害に対応、従来薬より依存性低 |
非ベンゾジアゼピン系 | ゾピクロン(Imovane®) | 約5〜7時間 | 入眠障害向き、比較的副作用少 |
- 依存性や耐性のリスクが低い
ベンゾジアゼピン系に比べ、長期使用でも依存や耐性の報告が少なく、安心して使いやすい点が特徴です。 - 日中の眠気や注意力低下が少ない
自然な入眠・維持を助ける作用のため、翌日の眠気やふらつきのリスクが従来薬より低くなります。高齢者でも比較的安全に使用可能です。 - 入眠・中途覚醒双方への効果
これまでの薬は入眠障害と中途覚醒のどちらかに偏ることが多かったですが、オレキシン受容体拮抗薬は両方の症状に対応しやすい傾向があります。 - 認知機能への影響が少ない
記憶や認知機能への影響が少ないことが報告されており、日常生活や仕事への影響が少ない点も大きな利点です。
睡眠薬の選択は、患者さんの年齢、併存疾患、生活リズム、副作用リスクなどを総合的に評価することが重要です。新しい種類の睡眠薬は、その安全性と自然な眠りへのアプローチから、現場でますます注目される選択肢となっています。